原子力技術 2012 7 15

書名 ビックリするほど原子力と放射線がわかる本
著者 江尻 宏泰 著  サイエンス・アイ新書

 政治家の小沢一郎氏が立ち上げた新党は、
党是として、脱原発を目指すという。
 しかし、それは、政治家として苦しい判断があるかもしれません。
脱原発では、票は集まるが、雇用は減るわけで、
(その理由は、「電力コスト 2012 7 7」を参照)
大物政治家として多くの議員を当選させるためには、
何とかして票を集めなければならない。
しかし、それでは、雇用は減少していくというところが、
政治家の苦しい胸の内かもしれません。
 私も、日本が農業国ならば、脱原発に賛成ですが、
現状では、日本は工業国なので、脱原発には賛成できません。
 基本的に、工業力は、大量の電力を消費し、
しかも、高品質な電力を必要とします。
 ただ単純に大量の電力を供給するだけではダメで、
特にハイテク産業の場合は、
高品質で安定した電力が必要となるのです。
そうなると、火力発電か原子力発電が必要となるわけです。
(その理由は、「電力の需給 2012 6 17」を参照)
 さて、前置きが長くなりました。
(原発維持派が主張する)原発を維持するにしても、
(脱原発派が主張する)原発を廃炉にするにしても、
どちらの選択肢でも、
原子力の技術者が大量に必要とされるのは、間違いありません。
未来に向かって、若い技術者を数多く育てていく必要があります。
 そういうわけで、現在、多くの国民が原子力に関心を持っているうちに、
原子力技術の普及・啓発を推進していく必要があります。
この本は、未来の技術者を発掘し育てていくのに最適な本であると思います。
 さて、本の中身も紹介しましょう。
この本の特色として、「弱い力」とニュートリノの説明が、
斬新で、わかりやすく説明している上に、図解も親切なところでしょう。
(「弱い力」とは、重力、電気力、核力に続く、第4の新しい型の力です)
 この本では、「弱い力」の作用によるベータ変換の図で、4種類を示しています。
A 電子獲得・ニュートリノ放出(陽子→中性子)
B ニュートリノ獲得・電子放出(中性子→陽子)
C 陽電子・ニュートリノ放出(陽子→中性子)
D 電子・反ニュートリノ放出(中性子→陽子)
 また、このような説明もあります。
「陽子と中性子は、電気があるかないか以外は、ほとんど同じ兄弟粒子だ。
一方、電子もニュートリノも、
電気があるかないか以外は、性質の似ている姉妹粒子である。
弱い力の作用で、陽子・中性子の兄弟間と電子・ニュートリノの姉妹間で相互に変わる」
 こんな説明の仕方もあるものだと感心しました。

電力コスト 2012 7 7

高い電力コストを放置すれば、日本国内から雇用が失われていく。

2012年7月7日の日本経済新聞Web刊には、このような記事があります。
 JXホールディングス系の東邦チタニウムは、
2016年にもマレーシアで500億円を投じ、チタン製錬所を建設する。
 低燃費タイヤの合成ゴムで最大手のJSRはタイで工場を建設、
海外生産比率を7割にする。
 電力コストなどの高い日本より海外に投資し、
世界での優位性を守る動きが高機能素材に広がってきた。
 (東邦チタニウムは)これまでは日本だけで生産し、
日欧の航空機部品メーカーへ販売していた。
 マレーシアで生産するのは円高対策に加え、
電力コストを大幅に抑えられるため。
 大量の電力を消費するチタンは、価格の約3割が電力コストとされるが、
マレーシアの同コストは日本の半分から10分の1程度という。
(以上、引用)
 私は、2011年7月2日に、電力と産業を考える上で、
日本のアルミニウム業界がたどった道のりは、大いに参考になりますと書きました。
 アルミニウムは、「電気の塊」と言われることがあります。
つまり、アルミニウムを作るには、大量の電力が必要となるのです。
 日本は、外国に比べ電力料金が高く、
国内でアルミニウム精錬は、経営的に困難で、
次々と生産拠点が海外に移ったのです。
 こうした動きが、ついに高機能素材にまで広がってきたのです。
高い電力コストは、日本国内、特に地方において工場閉鎖を招き、
次々と、働く場所がなくなっていくでしょう。
 そのことを政治家は、わかっているのか。
今の政治家は、人気取りに夢中となっていますが、
それで票は集まるが、日本国内から雇用が失われていくでしょう。
これは、「衆愚政治だ」と言わざるを得ないのです。

電力の需給 2012 6 17

書名 Newton ニュートン 2012 1

 少し古くなりますが、
科学雑誌「ニュートン」の1月号を取り上げます。
 基本的に、電力の需給は、ぴったりと合わせる必要があります。
一日の中で、電力の需要は、刻々と変化しますが、
電力の需要が増えたら、電力の供給を増やし、
電力の需要が減ったら、電力の供給を減らす必要があります。
 なぜ、そんなに手間がかかることをするのか。
それは、「ニュートン」から引用しましょう。
 電力が余ると、交流の周波数が狂ってしまうからです。
電力が余った状態では、そのおおもとである発電機の回転数を
上昇させようとする作用が働き、
結果的として周波数が上がってしまうのです。
逆に電力不足となると、周波数は、下がります。
(周波数は、関東では50ヘルツ、関西では60ヘルツです)
 周波数が本来の値から、ずれると、
周波数に基づいて決まるモーターの回転数が変動して、
工場での工業製品の製造に影響が出る場合があると言います。
 その許容範囲は、0.2から0.3ヘルツ程度までとされています。
また、周波数のずれが数%に達すると、
発電機が故障する可能性が出てくると言います。
 このため電力の需要と供給は、
ほぼ、ひったりと一致していなければならないのです。
 電力会社では、周波数の変化を見て、
需要の変化を推測し、それに合わせて発電量を調整することで、
この問題をクリアしています。
(以上、引用)
 基本的に、原子力発電では、出力を調整しにくいので、
原子力発電で一定量の発電を続け、
電力の需要の変化に対しては、火力発電で調整するのです。
火力発電ならば、上手に出力を増やしたり減らしたりできるのです。
 このようにして、電力会社は、日夜、
「高品質な電力」を供給することに苦労をしているのです。
日本の高度な工業力は、このような「高品質な電力」を必要としています。































































































トップページへ戻る